北朝鮮が核兵器や大陸間弾道ミサイル(ICBM)にこだわる理由は、複雑でありながら非常に明確です。根底にあるのは、「アメリカから攻撃されない地位を確立する」という長年の願望です。これが金日成、金正日、そして現在の指導者である金正恩に共通する最大の目標です。
北朝鮮の二つの狙い:米韓合同軍事演習とICBM開発
まず、北朝鮮がなぜ頻繁にミサイルを発射するのか、その背景には二つの大きな狙いがあります。一つ目は、米韓合同軍事演習に対する反発です。2023年も米韓は10月31日から11月4日まで大規模な合同軍事演習を実施しました。これに対して北朝鮮は、11月2日にミサイルを発射し、「我々も黙っていないぞ」という強い警告を発しました。このような行動は、アメリカと韓国に対する脅威の誇示、あるいは北朝鮮が対抗意志を持っていることを示すための手段です。
しかし、これ以上に重要なのが、二つ目の狙いです。それは、アメリカ本土を射程に収めるICBMの開発と、その完成を急ぐことです。北朝鮮は、ICBMの発射試験を繰り返すことで、その精度や射程を高め、最終的には核弾頭を搭載したミサイルをアメリカまで到達させる能力を持つとアメリカに信じさせることを目指しています。この目的が果たされれば、アメリカからの軍事的攻撃を抑止するための強力なカードを手にすることになります。
核抑止力が持つ意味:北朝鮮の生存戦略
北朝鮮がここまで核兵器やICBMに固執する理由は、アメリカの干渉を防ぐためです。彼らは、アメリカが北朝鮮に攻撃を仕掛けないようにするための「究極の抑止力」として核兵器を位置づけています。北朝鮮は国内でどれだけ非道な行為を行おうとも、核兵器があればアメリカが手を出せないと考えているのです。
具体的には、北朝鮮は国内で弾圧を行い、人権を踏みにじる体制を維持し続けています。過去には拉致問題や麻薬取引、ドルの偽造といった国際的な非道な行為も行ってきました。それにもかかわらず、北朝鮮は核兵器という絶対的な抑止力を持つことで、外部からの介入や攻撃を避けようとしているのです。
ミサイル発射の真の狙い:技術の向上
北朝鮮のミサイル発射が単なる脅威の誇示にとどまらないのは、技術的な向上を目指しているからです。発射するたびに、ミサイルの精度や射程、飛行軌道などを改良し、アメリカのワシントンやニューヨークといった大都市を確実に射程に収められるような技術を開発しています。このような技術の向上がなければ、いくらICBMを持っていても実際の威嚇効果は薄れます。そのため、北朝鮮は執拗にミサイル発射実験を繰り返しているのです。
たとえば、最近の発射では「ロフテッド軌道」と呼ばれる技術が使用されました。これは通常の軌道よりも高く打ち上げて、垂直に近い角度でミサイルを発射する方法です。この技術によって、ミサイルがどれだけの高度と推進力を持っているかを確認し、最終的には低角度での発射でもアメリカ本土に届くようにすることを狙っています。
北朝鮮の特殊性:他国と異なる抑止力への執着
ここで一つ重要な点は、他の国々、特に日本やヨーロッパの国々とは、北朝鮮の考え方が大きく異なることです。日本やヨーロッパ諸国は、核兵器を持つことで他国の攻撃を防ぐという発想を基本的には持っていません。たとえば、日本がアメリカや中国からの攻撃を避けるために核開発を進めようとすることは、国際的にも倫理的にもあり得ない話です。しかし、北朝鮮は異なります。北朝鮮は国内での弾圧や国際社会に対する挑発行為を続けており、そのために他国からの攻撃を避けるための抑止力が絶対に必要だと考えています。
金一族の指導者たちは、自らの体制維持を最優先事項としており、そのためには国内で何百万人の国民が犠牲になろうとも問題ないという考え方を持っています。外部からの批判や干渉を排除し、独裁体制を維持するために核兵器とICBMは不可欠な存在であり、それを手放すことはありません。
北朝鮮の独自の戦略
北朝鮮の核戦略は、一見すると狂気のように見えるかもしれませんが、実は非常に戦略的です。彼らは、アメリカや国際社会に対して「我々は核兵器を持っている限り、攻撃されることはない」というメッセージを発信し続けています。この戦略が成功すれば、アメリカからの攻撃を抑止し、同時に体制を維持するための最大のカードを手にすることができるのです。
また、核兵器を持つことで他国との交渉において有利な立場を得ることも狙っています。これまでにも北朝鮮は、核兵器開発を停止する見返りとして経済的な援助や制裁の緩和を求めてきました。このような取引は、北朝鮮にとって重要な外交カードとなっているのです。
結論
北朝鮮がミサイルを発射する背景には、単なる威嚇だけでなく、体制維持と核抑止力の確保という非常に明確な目的があります。アメリカからの攻撃を防ぎ、国内外での支配を強化するために、北朝鮮は今後も核兵器とICBMの開発を続けるでしょう。この一連の行動は、北朝鮮の生存戦略そのものであり、金一族の長年の願望を実現するための手段なのです。